選考委員長メッセージ

選考委員長 原田泰治 画伯選考委員長
原田 泰治 画伯
(はらだ たいじ、1940年4月29日~2022年3月2日)
「日本のふるさと」をテーマに全国47都道府県をくまなく 取材し、消えゆくふる里の情景とそこに生活する人々の 暮らしを、限りない愛情を込めて描きあげる画家。長野県諏訪市出身。
「日本の歌百選」(講談社刊)など著書多数。
中国・上海金山農民画協会会員。
クロアチア共和国ナイーブ美術協会名誉会員。
紺綬褒賞受賞。
長崎市「ナガサキピースミュージアム」名誉館長。
財団法人逓信協会「第56回前島賞」受賞。
信濃毎日新聞社・信毎文化事業財団「第28回信毎賞」受賞。

選考委員長・原田泰治画伯によるコンクール各年度の「総評」をご紹介いたします。

2000年度子ども絵画館募集パンフレット
2000年度子供たちが自分の足元を真剣に見て、身近なものをテーマに、沢山の絵を描いてくれたのは非常に嬉しいことです。
我々大人が忘れているものを「ハッ」と気づかせる感動的な絵が何枚もあり、日本の子供たちに 希望が持てるという“勇気”をもらいました。
2001年度子ども絵画館募集パンフレット
2001年度日本の子供たちの将来はどうなるのだろうか? 家庭や地域の絆が失われてゆくのではないか? そんな大人たちの憂いを吹き飛ばしてくれるような素晴らしい作品にたくさん出会えました。
とても大切なものが私たちの身の回りにある。自分の足元をしっかり見つめ、身近なものをテーマに描いてくれた子供たちの目。それは素直で純粋です。私自身も、こうした目線を忘れずに創作活動にのぞみたいと新たな意欲をかき立てられました。今年もいっぱいうれしい出会いがありました。
2002年度子ども絵画館募集パンフレット
2002年度今年から学校も週5日制になり、図工や美術の授業時間もますます圧縮されていく…そんな忙しい世の中にあって、これほど大勢の子供たちが絵を描いて送ってくれたことに大変感激しています。
「ふるさとのお盆」というテーマにふさわしく、家族との絆や人へのやさしさ、思いやりみたいなものが作品一点々々から溢れ出てくるようで、しかも絵のレベルも非常に上がっています。これからも子供たちが夏の思い出をどう描き留めていくのか見守っていくつもりですし、このコンクールから将来一人でも画を志す人が生まれてくれれば、と願っています。
2003年度子ども絵画館募集パンフレット
2003年度現在、学校教育で美術の時間が減っている中、こんなに大勢の子供たちが「ふるさとの思い出」を絵に託して送ってくれた。きっとご家族や先生方の応援もあってのことでしょう。この広がりは素晴しいことです。
コンクールを毎年続けてきて、若い才能の芽も着実に育っています。 審査している我々が、子供たちの絵から学んでいると、いつもながら実感させられます。
2004年度子ども絵画館募集パンフレット
2004年度忙しくて絵を描く時間もままならないはずの今の日本の子どもたちが、ふるさとや夏休みの思い出をきちっとしたカタチに表し留めてくれた、それが3万点も集まったということに感動しています。
作品のレベルも年々高くなる一方で、選考には大変苦労しました。そこで授賞枠を増やし、特別賞も出させていただきました。
今後とも子どもたちの素晴らしい可能性を見守っていきたいと思います。

原田 泰治先生

2005年度子ども絵画館募集パンフレット
2005年度『ふるさとのお盆の思い出』絵画コンクールも6年目を迎え、作品のレベルがまた一段と高くなったように思います。選考には大変苦労しました。
今回、特に自然の風景を細かく丹念に描いた力作が数多く目にとまりました。今の時代の忙しい子ども達からそうした作品が4万点近くも集まってきたことに大変感激していますし、選ぶ側の私達こそ彼等の絵から多くを学ばせてもらっているとは、いつもながらの実感です。
2006年度子ども絵画館募集パンフレット
2006年度『ふるさとのお盆の思い出』絵画コンクールも7年目を迎え、子ども達からの応募作品がついに4万点を超えました。継続することの大切さをあらためて実感しています。
子ども達をとりまく深刻な問題が連日のように報道される中、こんなにも純粋な気持ちにあふれた数多くの絵に触れることができ、また僕自身も気づかなかった物の見方・とらえ方を学ばせてもいただき、選考会は例年にもまして充実した時間でした。
本当にいい作品が揃いましたので、皆さんにも展覧会でぜひじっくりご覧いただきたいと願っています。
2007年度子ども絵画館募集パンフレット
2007年度最近は図工や美術の授業が減らされて、絵の具を溶くことさえ覚束ない子がいる今の日本で、5万人もの子ども達が絵を描いて送ってくれた、しかも年々レベルも上がっている。これは素晴らしいことです。
日本が急成長する中で忘れてきた大切なもの――お盆の行事や自然とのふれあい等、丁寧に描かれた多くの作品に出会えて、子ども達の確かな眼差しに「日本はまだ大丈夫」との想いを強くしました。
この感動をもっと大勢の方に伝えたいと願い、来年春休みにはフジテレビ本社で、夏休みは奈良国立博物館で入賞作品の展覧会を開きます。ぜひご来場ください。
2008年度子ども絵画館募集パンフレット
2008年度今年も素晴らしい作品がたくさん集まり、我々選考委員を大いに悩ませてくれました。初めのうちは『例年よりちょっと大人しいかな』という印象でしたが、途中でそれが勘違いであることに気がつきました。絵全体のレベルが格段に上達していたんですね。小学校低学年でも相当に達者な筆遣いで、我々も考え方を少し改めなければと思わせるほどでした。これもコンクールを毎年継続してきた成果の顕れと感動していますし、将来日本の美術界を背負ってくれる才能がここから生まれてくれるのでは、という期待もあります。来春の展覧会ではぜひ大勢の方々に見ていただきたいと強く願っております。
2009年度子ども絵画館募集パンフレット
2009年度このコンクールをお引き受けした当時、できるだけ長く続いてほしいと願っておりましたが、今回10周年の節目を迎えられ感無量です。しかも応募作品が過去最高の6万点近くも寄せられたことは、皆様からの信頼を積み重ねてきた継続の賜物と感じ入っております。
今回も作品のレベルが高く、選考には相当に苦労しました。中学生の部では『大人の画家が描いたのかな』と思わせるほど、小学校高学年の部も着眼点が面白く、小学校低学年の部では無邪気で素朴な力作が特に印象的でした。記念の年に、お盆やふるさとの思い出が凝縮された素晴らしい作品に数多く出会え、大変満足しています。

原田 泰治先生

2010年度子ども絵画館募集パンフレット
2010年度本コンクール11年目を迎えた今年もまた、全国からたくさんの素晴らしい作品が集まりました。今の日本は少し元気がないように言われますが、子ども達の絵はどれもパワーにあふれ、私達にエネルギーを与えてくれるものばかりです。
その地方特有の歌声が響いてきそうなお祭りの絵。そこに生活する人達の足音が聞こえそうな風景画。さわやかな風が吹き抜けるような夏景色・・・。このように身の周りのものに目を向け、大切にしようという感性がすくすくと育っていることに、たいへん心強いものを感じました。
「日本はこれからもっと元気になれる」という、これは子ども達からのメッセージです。
2011年度子ども絵画館募集パンフレット
2011年度社会の流れが大きく変わるような出来事が次々と起こり、今年は作品数の落ち込みも覚悟していましたが、なんと7万点近く――昨年にもまして大勢の子ども達が絵筆を揮ってくれたことに感動しています。
しかも世の中の変化を子ども達は敏感に受けとめているんですね。
〈いつもの夏〉の華やかさよりも、地道に自分の足元を見つめるような作品が非常に多く、節電や被災地へのエール等、〈2011年の夏〉がきちんと描かれている。そこからは〈家族の絆〉を大切に想う彼等のまなざしがしっかり伝わってくる・・・。子ども達の感じとる力は本当にすごい、と改めて感心させられた今年の選考会でした。
2012年度子ども絵画館募集パンフレット
2012年度全国の子ども達から寄せられた作品がついに7万点の大台を超え、これも13年間コンクールを続けてきたからこその皆さんのご評価と、大変うれしく思っています。
今年の傾向としては、大人の計算でもなかなか難しい、構図的にとてもユニークなもの、しかも細部にわたってきちんと表現されている、これまでにない作品が幾点も入賞を果たしました。さらに昨年被災された地域からもたくさんの作品を送っていただき、どの絵にも“ふるさとの夏” が丹念に描き込まれている・・・改めて“ふるさとの素晴らしさ”を強く感じさせてくれた選考会になりました。
2013年度子ども絵画館募集パンフレット
2013年度今年も7万点に近い作品が寄せられ、しかも絵のレベルがこれまで以上に高く、迷いに迷いぬいてようやく賞を決めることができました。それを大変嬉しく感じております。
14年間の道程には様々な苦労がありましたが、子ども達に絵を描くきっかけを示し、夢を育むお手伝いを続けていこうという主催者・関係者の強い想いに支えられ、このコンクールが今大きく花を咲かせるところまで来ている…そんな感慨を抱かせる今回の選考会でした。
今年で73才になる私ですが、体力の続く限り、選考委員長としていつまでも子ども達の可能性を見守り続けていきたいと願っています。
2014年度子ども絵画館募集パンフレット
2014年度今年もたくさんのすばらしい作品が全国の子ども達から寄せられ、これもコンクール15年の積み重ねの賜物と、あらためて継続していくことの大切さを感じ入っています。
今回、特に印象的だったのは、自分達の遊びや楽しかった体験、親戚が大勢集まるお盆の風景といった例年の題材にまじって、おじいちゃん・おばあちゃんを描いた作品がずいぶん増えたなぁということです。高齢化社会というとややネガティブな響きもありますが、子ども達の純粋な目には祖父母と過ごした夏の日が貴重なもの、幸せな時間として受けとめられている! その眼差しが作品からひしひしと伝わってきて、僕は大きな感動をいただきました。本当に有難うございました。

原田 泰治先生

2015年度子ども絵画館募集パンフレット
2015年度“夏の思い出”にふさわしい清々しさ、みずみずしさが印象的な、素晴らしい作品に今年もたくさん出会うことが叶い、第16回という土台の上にこそ成り立つ質の高さに感動しています。
特に今回は海外の日本人学校からも数多くの応募をいただきましたが、国内・海外に関わりなく、子ども達が見つめる身のまわりの世界がそれぞれの絵にちゃんと表れている――ですから、ひとつの土俵で存分に競い合えるテーマであり、国際的なコンクールへの発展にも確信を深め、と同時に選考委員としても心新たにいっそう気を引き締めて取り組んでいきたいと感じ入った次第です。
2016年度子ども絵画館募集パンフレット
2016年度コンクールも17年目を迎え、あらためて継続することの大切さ、それもただ募集を続けるだけでなく、毎年きちんと皆さんにご報告し、展覧会にも力を入れてきた、その積み重ねがあって今年も6万5千点を超す応募をいただけたことに、ありがたくも身の引き締まる思いです。
今回は例年以上に人物の表情をしっかり捉えた作品が多く目を惹きました。人間関係が難しくなった今の時代に、子ども達がこの夏の思い出として身近な人の顔を丹念に描き込んでくれた…そのことに大きな感動を覚えます。これからもこのコンクールの発展に微力ながらも尽くしていきたいと願っています。
2017年度子ども絵画館募集パンフレット
2017年度応募作品の質が年々向上していくのを見守り続けて感じるのは、子ども達の心の中に「このコンクールに入賞できたら どんなに素晴らしいか」と、夢がどんどん広がっているんじゃないかという嬉しい手応えです。その反面、そんな子ども達の挑戦にすべて賞をあげられないのは本当に切ないんですが、先生方みんなで一生懸命悩み抜いた末に選ばれた作品は、いずれも見る者の心に火をつけるような力作揃いとなりました。海外からの応募も増えて、ますますバラエティ豊かな“子ども達の夏”に出会う楽しみも広がった18年目の選考会でした。
2018年度子ども絵画館募集パンフレット
2018年度今回は〈自然とのふれあい〉をテーマにした作品以上に、ペットも含む〈身近な家族〉を題材に深く掘り下げた多くの力作に恵まれました。見舞いに来たお孫さんを笑顔で迎える入院姿のお祖父さんはじめ、人物や動物の一瞬の表情を捉えて丹念に描き上げた作品からは、長寿社会の子ども達ならではの豊かな感性を教えられた想いで、大変勉強になりました。このコンクールも来年はいよいよ“成人式” で、これまで応募してくれた沢山の子ども達と共に育ってきたんだなぁと感に入りながら、今後もその成長を見守っていきたいと願っています。
2019年度子ども絵画館募集パンフレット
2019年度このコンクールを始めてもう20年…。ひとりの赤ちゃんが成人式を迎えるまでの年月が経ったのかと思うと感無量ですし、その間に寄せられた作品が100万点に迫るという積み重ねも大変誇らしいものですが、それにも増して毎年子ども達の絵から勇気や感性を分けてもらえる喜びが、僕にとってかけがえのない宝物になっています。特に今年は、子どもらしい生き生きとした物の捉え方で色彩も豊かな多くの作品に恵まれ、この素晴らしい文化貢献運動に携わり続けてきた幸せを改めて感じさせてくれる、節目の年の選考会でした。

原田 泰治先生